税務調査で指摘されることは?よくある指摘事項と一番多い「期ズレ」|何年さかのぼるか・加算税・書面添付を税理士が解説

税理士 奥山博史

この記事は 税理士 奥山博史(東京税理士会 豊島支部・税理士登録番号 第66047号)が監修しています。
奥山税務会計事務所(東京都豊島区南池袋/池袋駅徒歩8分)
この記事の答え
  • 当事務所が実際の税務調査でいちばん多いと感じている指摘は「期ズレ」(入金ベースの経理で、売上や経費が別の事業年度に入ること)、次が「経費の混入」(誰と行ったか分からない飲食代や旅行の費用など)です。
  • 指摘されると、不足した税金に加えて過少申告加算税(原則10%)と延滞税がかかります。調査の通知が来る前に自分で修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません(国税通則法第65条第6項)。事実の隠蔽・仮装があれば重加算税(35%)です。
  • さかのぼって税額を直せるのは、原則として法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為があれば7年です(同法第70条)。実際に何年分を調べるかは、事前の通知で示されます。
  • いちばんの備えは証憑(請求書・納品書・領収書など)どおりに経理することです。当事務所は顧問先の申告すべてに「書面添付」をしており、調査の前に税理士が税務署へ説明する機会(意見聴取)があります。
税務調査の連絡が来た、今の経理で指摘を受けないか確かめたい、という方はご相談ください。初回のご相談は無料です(月〜金 9:00〜17:00/土日祝休)。

「税務調査が入ったら、何を指摘されるのか」。調査の連絡を受けた経営者の方が、まず気になるところだと思います。この記事では、税務調査でよく指摘される項目の一覧、当事務所の実務でとくに多い「期ズレ」と「経費の混入」、調査の流れと何年分をさかのぼるのか、追徴されたときの加算税と延滞税の割合、普段からできる備えと「書面添付」について、条文と国税庁の資料にもとづいて整理します。

  1. 1. 税務調査でよく指摘される項目の一覧
  2. 2. いちばん多いのは「期ズレ」:入金ベースの経理で起きる
    1. 2.1 売上は「入金した日」ではなく「引き渡した日」の事業年度に入れる
    2. 2.2 経費は「債務が確定した」事業年度に入れる
    3. 2.3 建設業は工事の引渡しと入金がずれやすい
  3. 3. 次に多いのは「経費の混入」:誰と行ったか分からない飲食と旅行の費用
    1. 3.1 飲食費は「誰と・何人で・何のために」が残っているか
    2. 3.2 旅行の費用は事業との関係を説明できるか
    3. 3.3 「節税のつもり」が脱税と判断されることもある
  4. 4. 税務調査の流れ:事前通知から調査の終わりまで
  5. 5. 何年分さかのぼって調べられるのか
  6. 6. 追徴税額はどのくらいになるのか:加算税と延滞税
  7. 7. 一番の対策は「証憑に基づいて経理する」こと
  8. 8. 税務調査の連絡が来たら:税理士は調査に立ち会い、その後の書類を作る
    1. 8.1 連絡は会社と税理士の両方に届き、用意する帳簿書類も示される
    2. 8.2 税理士の役目は、調査に立ち会い、指摘のあとに書類を作ること
  9. 9. 当事務所が顧問先の申告に付けている「書面添付」と「意見聴取」
    1. 9.1 書面添付制度とは
    2. 9.2 調査の通知の前に、税理士が意見聴取を受ける
    3. 9.3 意見聴取で疑問が解消すれば、調査に至らないこともある
    4. 9.4 書面添付は、調査の省略を前提とした制度ではない
  10. 10. 法律の変わり目は指摘が出やすい
  11. 11. 税務調査の指摘に関するよくある質問
    1. 11.1 期ズレを指摘されたら、追徴税額は大きくなりますか?
    2. 11.2 税務調査では何年分をさかのぼりますか?
    3. 11.3 調査の日程は変えてもらえますか?
    4. 11.4 書面添付をしていれば、税務調査は来ませんか?
    5. 11.5 飲食代の領収書には、何を書いておけばよいですか?
    6. 11.6 外注費も調査でよく見られますか?
  12. 12. まとめ
  13. この記事の根拠(一次資料)

1. 税務調査でよく指摘される項目の一覧

税務調査というと、売上を隠す、架空の経費を作るといった悪質なケースを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、普段まじめに経理をしている会社の調査で話題になるのは、もっと身近なことがほとんどです。法人の調査でよく確認される項目を、一覧にまとめました。

指摘されやすい項目 よくある中身 くわしい記事
売上の計上時期(期ズレ) 期末までに納品・引渡しが済んでいるのに、入金が翌期なので翌期の売上にしている この記事の2章
経費の計上時期 まだサービスを受けていない来期分の費用を当期に入れている/期末に請求書が届いていない外注費を入れもらしている 未払金と未払費用の違い
交際費・私的な支出 誰と行ったか分からない飲食代、家族旅行と区別がつかない旅費が経費に入っている この記事の3章/交際費と会議費の違い
外注費と給与の区分 実態は雇用に近い人への支払いを外注費にしている(源泉徴収や消費税の扱いが変わる) 外注費と給与の判定基準
役員報酬 期の途中で金額を変えた、決まった時期以外に役員へ賞与を払った 役員報酬の決め方
棚卸資産・作りかけの工事 期末の在庫や、引き渡していない工事の原価(未成工事支出金)を計上していない 未成工事支出金とは
事実の仮装 実際の取引に基づかない領収書、実態のない人件費を経費にしている(重加算税の対象) この記事の3.3

どの項目も、「その売上や支出そのものがウソ」かどうかより、いつの分なのか、何のための支出なのかを後から説明できるかが問われる点が共通しています。このうち当事務所の実務でいちばん多いのが「期ズレ」、次が「経費の混入」です。順に見ていきます。

2. いちばん多いのは「期ズレ」:入金ベースの経理で起きる

2.1 売上は「入金した日」ではなく「引き渡した日」の事業年度に入れる

期ズレとは、売上や経費を計上する事業年度が、本来あるべき年度とずれてしまうことです。当事務所の実務でも、キャッシュ(入金・支払)と請求書のずれ、つまり「入金ベース」で帳簿をつけていることから起きる期ズレがもっとも多く見られます。

法人税法では、商品の販売やサービスの提供による収益は、原則として目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の益金に算入すると定められています(法人税法第22条の2第1項)。お金が入ってきた日ではありません。

3月決算の会社の例 日付 入金ベースで記帳した場合 本来の計上
納品・請求 3月25日 何も記帳しない 当期(3月期)の売上
入金 4月30日 翌期の売上にする 売掛金の回収(売上ではない)

この例では、入金ベースのままだと当期の売上が少なく、翌期の売上が多くなります。これが典型的な期ズレです。

2.2 経費は「債務が確定した」事業年度に入れる

経費の側でも同じことが起きます。法人税法では、販売費や一般管理費などの費用は、当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除いて、その年度の損金になります(法人税法第22条第3項第2号)。

期末に請求書が届いていない外注費を翌期の支払時に計上していたり、逆に、まだサービスを受けていない来期分の費用を当期に入れていたりすると、期ズレとして確認の対象になります。家賃や保険料を前払いしたときの扱いは、前払金と前払費用の違いで整理しています。

2.3 建設業は工事の引渡しと入金がずれやすい

期ズレがとくに起きやすいのが建設業です。着手金や中間金を工事の完成前に受け取り、残金は引渡しの後に入金される、という流れが一般的なため、入金の日付だけを見て売上を立てると、完成工事高を計上する年度がずれてしまいます。当事務所には建設業の顧問先が約30社あり、決算で直すことが多いのも、作りかけの工事(未成工事支出金)と出来高の進み具合です。

完成前に受け取ったお金は「未成工事受入金」、完成前にかかった原価は「未成工事支出金」、引渡し後の未入金は「完成工事未収入金」と、建設業には期ズレを防ぐための専用の勘定科目があります。決算期をまたぐ工事がある場合は、次の記事もあわせてご確認ください。

3. 次に多いのは「経費の混入」:誰と行ったか分からない飲食と旅行の費用

3.1 飲食費は「誰と・何人で・何のために」が残っているか

期ズレに次いで多いのが、事業と関係の薄い支出が経費に混ざっているケースです。当事務所の経験では、とくに誰と行ったか分からない飲食代と旅行の費用が否認されやすい傾向にあります。

取引先などとの飲食代は、交際費等に当たるのが原則です(租税特別措置法第61条の4第6項)。そのうえで、1人当たり10,000円以下の飲食費は交際費等から除かれますが、この扱いは、飲食等のあった年月日、参加した得意先等の氏名または名称とその関係、参加した人数、費用の額と飲食店等の名称・所在地などを記載した書類を保存している場合に限り適用されます(同条第8項、国税庁 No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算)。なお、令和6年3月31日以前に支出した飲食費の基準金額は5,000円以下です。

つまり、領収書だけが残っていて「誰と、何人で、何のために」が分からない飲食代は、調査の場で事業との関係を説明できません。交際費と会議費の区分や、残しておく記録のくわしい内容は交際費と会議費の違いで解説しています。

3.2 旅行の費用は事業との関係を説明できるか

旅行の費用も、調査でよく確認される項目です。取引先の視察や出張であれば、行き先・日程・同行者・目的が業務の記録と結びついているはずです。反対に、家族旅行や私的な旅行と区別がつかないものは、会社の経費として認められないことがあります。

なお、専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用は、交際費等から除かれています(租税特別措置法第61条の4第6項第1号)。社員旅行を福利厚生費として扱えるかどうかの考え方は、福利厚生費として認められる範囲をご覧ください。

3.3 「節税のつもり」が脱税と判断されることもある

一般的な話として、節税のつもりで行ったことでも、やり方によっては調査で脱税と判断されることがあります。たとえば、実際の取引に基づかない領収書を経費にする、実態のない人件費を計上するといった処理は、節税ではなく事実の仮装です。

事実を隠蔽・仮装したところに基づいて申告していた場合には、過少申告加算税に代えて、税率35%の重加算税の対象になります(国税通則法第68条第1項)。期ズレのようなうっかりのズレとは、まったく別の扱いになることを知っておいてください。

今の経理で期ズレが起きていないか確かめたいときは
入金ベースで帳簿をつけている会社は、決算期をまたぐ売上や外注費が別の年度に入っていることがあります。調査の通知が来る前なら、自分で直せば過少申告加算税はかかりません。奥山税務会計事務所は、顧問先の申告すべてに書面添付をしています。初回のご相談は無料で、1時間ほどです。直近の決算書・契約書・試算表をお持ちください。
お電話:03-5951-0271(月〜金 9:00〜17:00/土・日・祝休)|お問い合わせフォーム|LINEで相談する

4. 税務調査の流れ:事前通知から調査の終わりまで

法人の税務調査は、多くの場合、次の順に進みます。

段階 何が起きるか 根拠
① 事前通知 原則として電話で、調査を開始する日時・場所・目的・対象となる税目・対象となる期間・対象となる帳簿書類その他の物件などが、会社と税務代理をする税理士に通知されます。都合が悪ければ日時の変更を協議できます。 国税通則法第74条の9、国税庁 税務調査手続に関するFAQ 問13・問16
② 実地の調査 調査官が会社に来て、事業の概況を聞き、帳簿と証憑を確認します。調査に要する時間や日数は、事前通知の時点では知らされません。 同FAQ 問19
③-1 指摘がない場合 その時点で更正決定等をすべきと認められない旨が、書面で通知されます。 国税通則法第74条の11第1項
③-2 指摘がある場合 調査結果の内容(金額と理由)が説明され、修正申告を勧められることがあります。修正申告をした場合は不服申立てはできませんが、更正の請求はできる旨の書面が交付されます。 国税通則法第74条の11第2項・第3項

なお、事前通知は原則であり、申告内容や過去の調査結果などから、事前通知をすると違法又は不当な行為を容易にし、正確な税額等の把握を困難にするおそれがあると判断した場合などには、事前通知をしないこともあると国税庁は説明しています(国税庁 税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)問20)。

5. 何年分さかのぼって調べられるのか

税務署が更正や決定によって税額を直せる期間には、法律で期限があります。

ケース さかのぼれる期間
通常の更正・決定 法定申告期限から5年
偽りその他不正の行為により税額を免れた場合 法定申告期限から7年

(国税通則法第70条第1項・第5項)

実際の調査で何年分を確認するかは、事前通知の「調査の対象となる期間」で示されます。通知された年度の内容を確かめるために、それより前の帳簿書類の提示を求められることもあります(同FAQ 問9)。帳簿と、取引で受け取った注文書・契約書・領収書などは、青色申告法人では原則7年間の保存が必要です(法人税法施行規則第59条)。

6. 追徴税額はどのくらいになるのか:加算税と延滞税

「調査で指摘されたら、いくら払うことになるのか」も気になるところです。追徴の金額は、会社の規模や指摘の中身によってまったく違います。ただ、当事務所の実務の感覚では、普段から証憑どおりに経理をしている会社で、期ズレや経費の一部について指摘を受けたという程度であれば、大きな金額になることは多くありません。期ズレは売上や経費がなくなるわけではなく、「どの年度に入れるか」の問題だからです。

制度としては、修正申告や更正で税額が増えた場合、不足していた税額に加えて次の負担が生じます。

修正申告をした時期 過少申告加算税の割合
調査の通知が来る前に、自分で修正申告 かからない(国税通則法第65条第6項)
調査の通知の後、調査による更正を予知する前に修正申告 5%(一定の金額を超える部分は10%)
調査を受けて修正申告・更正 10%(一定の金額を超える部分は15%)
事実の隠蔽・仮装があった場合 過少申告加算税に代えて重加算税35%(同法第68条第1項)

「一定の金額」とは、追加で納める税額のうち、期限内に申告した税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分です。その部分には5%が上乗せされます(国税通則法第65条第1項・第2項)。

あわせて、本来の納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、延滞税がかかります(国税通則法第60条)。令和8年(2026年)1月1日から12月31日までの期間の割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以後が年9.1%です(国税庁 No.9205 延滞税について)。修正申告の場合の納期限は、申告書を提出した日です。

7. 一番の対策は「証憑に基づいて経理する」こと

当事務所が顧問先に普段からお願いしているのは、証憑(しょうひょう)に基づいて経理をしていただくことです。証憑とは、請求書、納品書、契約書、領収書など、取引の事実を示す書類のことです。

  • 売上は、入金の通帳ではなく、納品書・請求書の日付で計上する
  • 経費は、支払日ではなく、サービスを受けた日・請求書の内容で計上する
  • 飲食代は、領収書に相手先・関係・人数・目的をその場でメモしておく
  • 旅行や出張は、行き先・日程・用件を業務の記録と結びつけておく
  • 建設業は、工事ごとの原価の集計(工事台帳)をつくり、期末に引き渡していない工事を確かめる

証憑どおりに記帳し、その証憑を保存しておくことが、そのまま調査への備えになります。誤りに気づいたら、調査の通知が来る前に修正申告をすれば過少申告加算税はかかりません(6章の表)。

8. 税務調査の連絡が来たら:税理士は調査に立ち会い、その後の書類を作る

8.1 連絡は会社と税理士の両方に届き、用意する帳簿書類も示される

4章のとおり、実地の調査では原則として、あらかじめ納税者と税務代理をする税理士の両方に、調査の日時や対象となる帳簿書類などが通知されます(国税通則法第74条の9第1項)。何を用意すればよいかは、この事前通知の中で税務署から示されます。

調査は税理士事務所ではなく会社に来るものです。そのため、調査の連絡が来ても、当事務所の側で特別な準備をすることはほとんどありません。会社には用意するものをお伝えするくらいです。日頃から証憑に基づいて経理ができていれば、慌てて準備することもありません。

8.2 税理士の役目は、調査に立ち会い、指摘のあとに書類を作ること

税理士の仕事には、税務署の調査に関して、納税者に代わって主張や説明(陳述)をする「税務代理」が含まれています(税理士法第2条第1項第1号)。税務代理をする税理士は、その権限を証する書面(税務代理権限証書)を税務署に提出します(同法第30条)。

当事務所では、顧問先の調査には税理士が立ち会い、税務署の質問に対して、申告書をどのような考え方で作ったかを会社と一緒にご説明します。調査の結果、指摘事項があれば、指摘の中身を確認したうえで、修正申告書など、その後に必要となる書類を当事務所が作成します。

9. 当事務所が顧問先の申告に付けている「書面添付」と「意見聴取」

9.1 書面添付制度とは

当事務所では、顧問先の申告書すべてに「書面添付制度」の書面を添付しています。書面添付制度とは、税理士が申告書を作成したときに、その作成に関し、計算し、整理し、または相談に応じた事項を記載した書面を、申告書に添付できる制度です(税理士法第33条の2第1項)。

9.2 調査の通知の前に、税理士が意見聴取を受ける

この書面が添付された申告書について、税務署が日時・場所をあらかじめ通知して帳簿書類を調査する場合には、その通知をする前に、税務代理をする税理士に対して、添付書面に記載された事項に関し意見を述べる機会を与えなければならないとされています(税理士法第35条第1項)。これが「意見聴取」です。会社に調査の連絡が来る前に、まず税理士が税務署からの質問を受け、申告書をどのように作ったかを説明することになります。

9.3 意見聴取で疑問が解消すれば、調査に至らないこともある

当事務所の経験でも、意見聴取の段階で特に問題がなければ、そこで終わり、会社への調査に移らないこともあります。国税庁も、意見聴取の結果、調査の必要がないと認められた場合には、税理士に「現時点では調査に移行しない」旨を、原則として文書で連絡するとしています(国税庁 税理士制度のQ&A「4 書面添付・意見聴取制度」問4-11)。

また、意見聴取での質疑等だけがきっかけとなって、調査通知の前に修正申告書を提出した場合には、加算税は賦課されないと国税庁は説明しています(同Q&A 問4-6)。

9.4 書面添付は、調査の省略を前提とした制度ではない

ただし、国税庁のQ&Aでは、意見聴取で疑問点が解消した場合など、結果的に調査に至らないことはあり得るものの、書面は調査の省略を前提としているものではないと説明されています(同Q&A 問4-3)。

添付する書面の土台になるのは、顧問先の帳簿と、私たちが顧問先から伺った内容です。実務では、伺った内容と実際の取引が食い違っていることもあり得ます。そのため、当事務所がすべての申告に書面を添付していても、書面添付があれば調査に進まずに済む、とは言い切れません。書面添付を生かすためにも、日頃から証憑どおりに経理をしていただくことが大切です。

10. 法律の変わり目は指摘が出やすい

もうひとつ、実務で感じているのは、税法が大きく変わった時期の処理は、調査でいろいろと出てきやすいということです。とくに消費税や相続まわりは、制度の見直しが続いてきた分野です。

改正の前後で扱いが変わる取引は、「前はこうしていた」という慣れで処理してしまいがちです。交際費の飲食費の基準(令和6年4月1日以後の支出は10,000円以下、それより前は5,000円以下)のように、いつの支出なのかによって基準そのものが違うものもあります。改正があった年度の決算では、いつもの処理がそのまま使えるか、一度確認しておくと安心です。

また、調査では帳簿の数字だけでなく、会社に残っているものが話題になることもあります。たとえば、亡くなった先代のオーナーの手形や印鑑が出てくるといったことも実際にあります。代替わりをした会社では、先代の時代の書類や預金の整理を早めにしておくことをおすすめします。相続税の調査で見られるポイントは名義預金とは?でも解説しています。

11. 税務調査の指摘に関するよくある質問

11.1 期ズレを指摘されたら、追徴税額は大きくなりますか?

追徴の金額は会社や指摘の中身によってまったく違いますが、当事務所の実務では、期ズレの指摘で大きな金額になることは多くありません。ただし、不足した税額に対する過少申告加算税や延滞税はかかります(6章)。

11.2 税務調査では何年分をさかのぼりますか?

税額を直せるのは原則として法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為があれば7年です(国税通則法第70条)。実際に何年分を調べるかは、事前通知の「調査の対象となる期間」で示されます。

11.3 調査の日程は変えてもらえますか?

国税庁のFAQでは、事前通知の際に都合を尋ね、通知の後でも、一時的な入院や親族の葬儀、業務上やむを得ない事情などがあれば、申し出により変更を協議するとしています(税務調査手続に関するFAQ 問16)。

11.4 書面添付をしていれば、税務調査は来ませんか?

いいえ。書面添付制度は調査の省略を前提としたものではありません。調査の通知の前に税理士への意見聴取が行われ、そこで疑問が解消した場合に、結果として調査に至らないことがある、という制度です。当事務所は顧問先の申告すべてに書面を添付していますが、申告の土台になる取引の内容が事実と違っていれば、調査に進むことはあり得ます。

11.5 飲食代の領収書には、何を書いておけばよいですか?

1人当たり10,000円以下の飲食費を交際費等から除く扱いを使う場合は、飲食等のあった年月日、参加した得意先等の氏名・名称とその関係、参加人数、費用の額と飲食店等の名称・所在地などを記載した書類の保存が必要です。この扱いを使わない場合でも、相手先と目的が分かる記録を残しておくことが、調査で事業との関係を説明する材料になります。

11.6 外注費も調査でよく見られますか?

外注費が実は給与ではないかという点も、調査で確認されることの多い論点です。判定の考え方は外注費と給与の判定基準で解説しています。

12. まとめ

  • 当事務所の実務で税務調査の指摘が多いのは、期ズレ(入金ベースの経理による年度のずれ)と経費の混入(誰と行ったか分からない飲食・旅行の費用など)です。ほかに外注費と給与の区分、役員報酬、棚卸資産や作りかけの工事もよく確認されます。
  • 売上は引き渡した日(法人税法第22条の2)、経費は債務が確定した日(同法第22条第3項第2号)の年度に入れるのが原則です。建設業は工事の引渡しと入金がずれやすいため、とくに注意が必要です。
  • 調査は原則として事前通知から始まり、対象となる期間や帳簿書類も示されます(国税通則法第74条の9)。税額を直せるのは原則5年、不正があれば7年です(同法第70条)。
  • 指摘されると過少申告加算税(原則10%)と延滞税がかかります。調査の通知の前に自分で修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。隠蔽・仮装があれば重加算税35%です。
  • 当事務所は顧問先の申告すべてに書面を添付しています。調査の前に税理士が意見聴取を受け、疑問が解消すれば調査に至らないこともありますが、調査の省略を前提とした制度ではありません(税理士法第33条の2・第35条)。

税務調査への備えは、調査の連絡が来てから始めるものではなく、毎月の経理の中で積み上げていくものです。どこまでが指摘の対象になるかは会社ごとの事情で変わりますので、「今の経理のやり方で期ズレが起きていないか」「この経費は説明できるか」が気になる方は、税理士にご相談ください。

この記事の根拠(一次資料)

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、2026年10月時点の税制・法令に基づいて作成しています。税制は改正される場合があり、また個別の取り扱いは状況により異なります。実際の判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
税理士 奥山博史

奥山 博史(おくやま ひろし)/税理士
東京税理士会 豊島支部・税理士登録番号 第66047号
昭和32年生まれ。東洋大学経済学部卒業。平成元年に奥山税務会計事務所(東京都豊島区南池袋)を開業。会社設立・法人/個人の税務顧問・相続まで、池袋を拠点に幅広く手がける。

この記事は 税理士 奥山博史(東京税理士会 豊島支部・登録番号 第66047号) が監修しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました