未払金と未払費用の違いは「継続的な役務提供かどうか」|判定手順と決算での注意点

税理士 奥山博史

この記事は 税理士 奥山博史(東京税理士会 豊島支部・税理士登録番号 第66047号)が監修しています。
奥山税務会計事務所(東京都豊島区南池袋/池袋駅徒歩8分)

決算のときに「これは未払金ですか、未払費用ですか」と迷う場面は少なくありません。どちらも「まだ支払っていない」負債なので、どちらでも同じに見えます。実際、金額が同じであればその期の利益も変わりません。

それでも会計上は区別することとされていますし、区別しないまま処理していると、決算で計上漏れを起こしたり、翌期に二重計上したりする原因になります。ここでは、両者の分かれ目がどこにあるのか、具体的にどの科目を使うのか、そして税務上の損金算入とはどう関係するのかを、企業会計原則の原文と条文にもとづいて順に整理します。

結論:分かれ目は「一定の契約に従い、継続して役務の提供を受けているか」

未払費用の定義は、企業会計原則注解【注5】「経過勘定項目について」の(3)に置かれています。

未払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、すでに提供された役務に対していまだその対価の支払が終らないものをいう。(中略)また、未払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による未払金とは区別しなければならない。

読み取るべき条件は3つです。

  • 一定の契約に従っていること(その都度の単発の取引ではない)
  • 継続して役務の提供を受けていること(物の売買ではなくサービスであり、かつ継続的であること)
  • すでに提供された役務に対して、対価の支払が終わっていないこと

この3つをすべて満たすものが未払費用です。そして注解は最後に、はっきりと「かかる役務提供契約以外の契約等による未払金とは区別しなければならない」と書いています。つまり未払金は「未払費用ではないほうの、まだ払っていないもの」という位置づけです。まず未払費用に当たるかどうかを判定し、当たらなければ未払金、と考えると迷いにくくなります。

具体例で見分ける

実務でよく出てくるものを、この判定基準に当てはめると次のようになります。

内容 科目 理由
事務所や店舗の家賃(後払いの契約) 未払費用 賃貸借契約に基づき継続的に役務の提供を受けている
借入金の利息(未払分) 未払費用 金銭消費貸借契約に基づき、期間の経過に応じて発生する
給与(締日後から決算日までの分) 未払費用 雇用契約に基づき継続的に労務の提供を受けている
水道光熱費・通信費の未検針分 未払費用 供給契約に基づき継続的に供給を受けている
リース料・保守契約料(後払い) 未払費用 契約に基づく継続的な役務提供
固定資産や車両の購入代金の未払分 未払金 役務提供契約ではなく、資産の売買契約による
単発で依頼した外注費・スポットの報酬 未払金 継続的な役務提供ではない
事務用品など消耗品の購入代金 未払金 物の売買であり、営業取引でもない
単発の広告掲載料 未払金 継続的な契約に基づくものではない
商品・原材料の仕入代金 買掛金 営業上の取引による仕入債務は買掛金で表示する

買掛金との関係も押さえておく

未払金とよく混同されるのが買掛金です。財務諸表等規則第47条第2号は、買掛金を「通常の取引に基づいて発生した営業上の未払金」と定義しています。つまり本業の仕入や外注に係る未払いは買掛金、それ以外の未払いが未払金という切り分けです。同条第5号では「通常の取引に関連して発生する未払金又は預り金で一般の取引慣行として発生後短期間に支払われるもの」を流動負債とすることが定められています。

未払費用については、同規則第48条が「未払費用及び前受収益は、流動負債に属するものとする」と定めています。

未払費用は「期間の経過分だけ」を計上する

ここが未払金といちばん違うところです。注解【注5】(3)は、未払費用について「時間の経過に伴いすでに当期の費用として発生しているものであるから、これを当期の損益計算に計上する」としています。

つまり未払費用は、契約の全期間ではなく、決算日までに実際に役務の提供を受けた部分だけを計上します。まだ提供を受けていない先の期間の分を入れてはいけません。

たとえば給与の締日が毎月20日で、支払が翌月という会社が3月末に決算を迎えるとします。この場合、3月21日から3月31日までの11日分は、労務の提供をすでに受けているのに支払が終わっていない部分です。この分を未払費用(未払給与)として計上します。4月分は当期の役務提供ではないので入りません。

一方、未払金は「支払うべき金額が確定している債務」を計上するもので、期間按分という考え方はありません。この違いが、次に述べる決算での実害につながります。

区別しないと何が起きるのか

1. 計上漏れが起きる

未払金は請求書が届いてから計上することが多く、請求書という「きっかけ」があります。これに対して未払費用は、請求書が届いていなくても、決算日までに役務の提供を受けていれば計上するものです。この違いを意識していないと、締日後の給与や未検針の水道光熱費のように請求書が来ない項目が、そのまま漏れます。

2. 翌期の二重計上につながる

未払費用は翌期首に振り戻し、実際の支払時に費用が二重にならないよう処理するのが一般的です。未払金と混在させて管理していると、この振戻しが漏れて、同じ費用を2回計上してしまうことがあります。

3. 貸借対照表の表示が実態と合わなくなる

前述のとおり、買掛金・未払金・未払費用は財務諸表等規則で別々に扱われています。金融機関や取引先が決算書を見るとき、営業債務(買掛金)とそれ以外がどれくらいあるかは見られるところです。区別が曖昧だと、そこから読み取れる情報が正しくなくなります。

重要性が乏しいものまで厳密にやる必要はない

なお、企業会計原則注解【注1】の重要性の原則の適用例には、「前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益のうち、重要性の乏しいものについては、経過勘定項目として処理しないことができる」と示されています。少額のものまですべて日割りする必要はありません。どこまでを重要とみるかは会社の規模によって変わりますので、毎期同じ基準で運用することが大切です。支払側で対になる前払金と前払費用の違いは、前払金と前払費用の違いは「継続的な役務提供かどうか」|短期前払費用の特例と2つの要件で解説しています。

税務では「債務確定基準」という別のものさしがある

ここまでは会計上の話です。法人税では、損金に算入できるかどうかを別の基準で判定します。

法人税法第22条第3項第2号は、損金の額に算入すべき金額として「販売費、一般管理費その他の費用」を挙げたうえで、括弧書きで「償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く」としています。これが債務確定基準です。

この「債務が確定している」の意味は、法人税基本通達2-2-12が次の3要件で定めています。

  • (1) 当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
  • (2) 当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
  • (3) 当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。

3つの要件の「全てに該当するもの」とされています。ここで押さえておきたいのは、会計上いったん未払費用として計上しても、この3要件を満たしていなければ税務上は損金にならず、申告で加算する必要があるということです。

逆に言えば、締日後の給与や未払家賃のように、契約があって役務の提供が済んでいて金額も計算できるものは、3要件を満たしやすい性質を持っています。未払費用として計上すべきものが、そのまま損金として認められやすいのは偶然ではありません。

対になる「前払費用」と、短期前払費用の特例

未払費用の裏返しが前払費用です。注解【注5】(1)は、前払費用を「一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価」と定義し、こちらも「かかる役務提供契約以外の契約等による前払金とは区別しなければならない」としています。判定の考え方は未払費用とまったく同じです。

税務にはこの前払費用について例外があります。法人税基本通達2-2-14は、前払費用の額は原則として損金にならないとしたうえで、支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合に、その金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認めるとしています。いわゆる短期前払費用です。

ただし同通達の注書きでは、借入金を預金や有価証券等に運用する場合の支払利子のように収益の計上と対応させる必要があるものには、この取扱いは適用されないとされています。「1年以内なら何でも一括で落とせる」というものではない点にご注意ください。

実務での判定手順

迷ったときは、次の順に確認すると答えが出ます。

  1. 本業の仕入・外注か? → はいなら買掛金
  2. 一定の契約に基づく、継続的な役務の提供か? → いいえなら未払金
  3. その役務を、決算日までに実際に受けているか? → 受けている部分だけが未払費用
  4. 金額を合理的に算定できるか? → できなければ税務上は損金にならない(法基通2-2-12(3))
  5. 金額に重要性があるか? → 乏しければ経過勘定処理を省略できる(注解【注1】)

間違えやすいところ

  • 請求書が来ていないから計上しない……未払費用は請求書の有無ではなく、役務の提供を受けたかどうかで判定します。
  • 契約期間の全額を未払費用にしてしまう……計上できるのは決算日までに提供を受けた部分だけです。
  • 固定資産の購入代金を未払費用にしてしまう……売買契約であって役務提供契約ではないので、未払金です。
  • 買掛金と未払金を混ぜて管理している……営業債務かどうかで分ける必要があります。
  • 会計と税務を同じだと思っている……未払費用に計上しても、債務が確定していなければ損金にはなりません。

まとめ

  • 未払費用は「一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合に、すでに提供された役務に対して支払が終わっていないもの」です(企業会計原則注解【注5】(3))。
  • それ以外の契約による未払いは未払金で、本業の仕入・外注に係るものは買掛金です(財務諸表等規則第47条)。
  • 未払費用は、決算日までに提供を受けた期間の分だけを計上します。請求書の到着は判定基準ではありません。
  • 税務上の損金算入は債務確定基準で別に判定し、法人税基本通達2-2-12の3要件をすべて満たす必要があります。

科目の選び方そのものは利益を変えませんが、「未払費用という科目を意識しているかどうか」は、決算で拾えるものの範囲を変えます。締日後の給与や未検針の光熱費が毎期漏れていないか、決算前に一度確認しておくことをおすすめします。判断に迷う項目がある場合は、契約書の内容とあわせてご相談ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、2026年7月時点の税制・法令に基づいて作成しています。税制は改正される場合があり、また個別の取り扱いは状況により異なります。実際の判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
税理士 奥山博史

奥山 博史(おくやま ひろし)/税理士
東京税理士会 豊島支部・税理士登録番号 第66047号
昭和32年生まれ。東洋大学経済学部卒業。平成元年に奥山税務会計事務所(東京都豊島区南池袋)を開業。会社設立・法人/個人の税務顧問・相続まで、池袋を拠点に幅広く手がける。

この記事は 税理士 奥山博史(東京税理士会 豊島支部・登録番号 第66047号) が監修しています。

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