貸倒引当金とは?損金にできる法人の条件・繰入限度額の計算・別表と洗替まで税理士が解説

税理士 奥山博史

この記事は 税理士 奥山博史(東京税理士会 豊島支部・税理士登録番号 第66047号)が監修しています。
奥山税務会計事務所(東京都豊島区南池袋/池袋駅徒歩8分)

貸倒引当金は、売掛金や貸付金が回収できなくなる場合に備えて、あらかじめ損失の見込額を費用として計上しておく仕組みです。会計としては昔からある考え方ですが、税務上これを損金にできるかどうかは、会社によって答えが変わります。

平成23年度の改正により、法人税法上の貸倒引当金の適用法人は限定されました。ここを知らずに「毎期積んでいるから今期も」と処理していると、申告で加算が必要になります。ここでは、まず自社が対象になるのかというところから、繰入限度額の計算、申告手続、翌期の処理までを順に整理します。

まず確認:貸倒引当金を損金にできる法人は限られている

法人税法第52条第1項は、貸倒引当金の繰入額を損金の額に算入できる内国法人として、次に掲げるものを挙げています。

  • 普通法人(投資法人および特定目的会社を除く)のうち、資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの、または資本もしくは出資を有しないもの(いずれも大通算法人を除く)
  • 公益法人等または協同組合等
  • 人格のない社団等
  • 銀行、保険会社その他これらに準ずる法人
  • リース資産の対価の額に係る金銭債権を有する法人など、金融に関する取引に係る金銭債権を有する一定の法人

そして1つ目の「資本金1億円以下」からは、除かれる法人があります。国税庁タックスアンサー「No.5501 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定」では、次の法人が除かれると示されています。

  • 大法人(資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人、相互会社および外国相互会社、受託法人)との間に、その大法人による完全支配関係がある普通法人
  • 完全支配関係があるすべての大法人が有する株式等の全部を一の法人が有するものとみなした場合に、その一の法人による完全支配関係があることとなる普通法人

つまり、自社の資本金が1億円以下でも、資本金5億円以上の親会社の100パーセント子会社であれば、貸倒引当金の繰入額を損金にできません。グループ会社の一員として経理をされている場合は、まずここを確認してください。

なお、対象外の法人であっても、会計上、貸倒引当金を計上すること自体は妨げられません。その場合は税務上損金にならないため、申告書で加算調整することになります。

個別評価と一括評価の2本立てになっている

貸倒引当金の繰入限度額は、個別評価金銭債権と一括評価金銭債権とに区分して計算します。前者は「この取引先が危ない」と個別に判定するもの、後者は残っている債権全体に一定率を掛けるものです。両方を計上することもできます。

個別評価金銭債権

法人税法第52条第1項は、政令で定める事実が生じている金銭債権を個別評価金銭債権とし、その損失見込額を繰り入れられるとしています。法人税法施行令第96条第1項が、その事実と繰入限度額を定めています。

事実 繰入限度額
更生計画認可の決定、再生計画認可の決定、特別清算に係る協定の認可の決定などに基づいて弁済が猶予され、または賦払により弁済されること(第1号) その事由が生じた日の属する事業年度終了の日の翌日から5年を経過する日までに弁済されることとなっている金額以外の金額(取立て等の見込みがある部分を除く)
債務超過の状態が相当期間継続し、かつ事業に好転の見通しがないこと、災害・経済事情の急変等により多大な損害が生じたことその他の事由により、債権の一部の取立て等の見込みがないと認められること(第2号) その一部の金額に相当する金額
更生手続開始の申立て、再生手続開始の申立て、破産手続開始の申立てなどの事由が生じていること(第3号) その金銭債権の額(実質的に債権とみられない部分の金額および取立て等の見込みがある部分を除く)の100分の50に相当する金額

第1号と第3号は事実が明確なので判断しやすい一方、第2号は「相当期間」「好転の見通しがない」といった評価が入ります。ここを使う場合は、判断の根拠となる資料(決算書、督促の記録、交渉の経緯など)を残しておくことが重要です。

一括評価金銭債権

法人税法第52条第2項は、売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権(個別評価金銭債権を除く)を一括評価金銭債権とし、その貸倒れによる損失の見込額を繰り入れられるとしています。

どの債権が含まれるかは、国税庁タックスアンサー「No.5500 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の対象となる金銭債権の範囲」に整理されています。

一括評価金銭債権に当たるもの 当たらないもの
売掛金、貸付金/未収の譲渡代金、未収加工料、未収請負金、未収手数料、未収保管料、未収地代家賃等または貸付金の未収利子で益金に算入されたもの/他人のために立替払をした場合の立替金/未収の損害賠償金で益金に算入されたもの/保証債務を履行した場合の求償権/通算税効果額に係る未収金 など 預貯金およびその未収利子、公社債の未収利子、未収配当等/保証金、敷金、預け金その他これらに類する債権/手付金、前渡金等のように資産の取得の代価または費用の支出に充てるものとして支出した金額/前払給料、概算払旅費、前渡交際費等のように将来精算される費用の前払として一時的に仮払金、立替金等として経理されている金額/仕入割戻しの未収金 など

実務でとくに間違えやすいのが、敷金・保証金と前渡金です。貸借対照表では債権のように見えますが、一括評価金銭債権には含まれません。事務所の敷金を含めて計算していると、繰入限度額を過大に計算することになります。

また、法人税法第52条第9項により、完全支配関係がある他の法人に対して有する金銭債権は、個別評価・一括評価のいずれからも除かれます。グループ内の売掛金は対象外ということです。

繰入限度額の計算:原則は貸倒実績率

一括評価金銭債権に係る繰入限度額は、原則として過去の貸倒れの実績から計算します。国税庁No.5501では次のとおり示されています。

繰入限度額 = 期末一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額 × 貸倒実績率

貸倒実績率は、過去3年間の貸倒損失の発生額に基づいて計算し、小数点以下4位未満を切り上げます。算式中の月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数は1か月とします。

この方法は実績に基づくため、貸倒れがほとんど発生していない会社では、繰入限度額がごく小さくなります。設立して間もない会社や、取引先が安定している会社では、次の特例のほうが有利になることが多くなります。

中小法人の特例:法定繰入率

租税特別措置法第57条の9第1項は、中小企業者等について、貸倒実績率に代えて法定繰入率による計算を認めています。対象となるのは、中小法人、公益法人等または協同組合等、人格のない社団等です。

法定繰入率は、租税特別措置法施行令第33条の7第4項により、その法人の営む主たる事業の区分に応じて定められています。

主たる事業 法定繰入率
卸売業および小売業(飲食店業および料理店業を含み、割賦販売小売業を除く) 1,000分の10
製造業(電気業、ガス業、熱供給業、水道業および修理業を含む) 1,000分の8
金融業および保険業 1,000分の3
割賦販売小売業ならびに包括信用購入あっせん業および個別信用購入あっせん業 1,000分の7
その他の事業 1,000分の6

建設業やサービス業など、上の4区分に当てはまらない事業は「その他の事業」の1,000分の6になります。

法定繰入率を使うときは「実質的に債権とみられない金額」を控除する

措置法施行令第33条の7第2項は、法定繰入率を適用する際の金銭債権について、「その債務者から受け入れた金額があるためその全部又は一部が実質的に債権とみられない金銭債権」とし、その債権とみられない部分の金額に相当する金額を控除すると定めています。

たとえば、同じ相手先に対して売掛金があり、同時にその相手先から買掛金や預り金があるような場合です。相殺できる範囲は実質的に貸し倒れないと考えるため、その分を差し引いてから法定繰入率を掛けます。この控除を忘れると繰入限度額が過大になります。

適用除外事業者は使えない

国税庁No.5501では、中小法人であっても適用除外事業者(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等)は、法定繰入率の適用対象から除かれるとされています。所得の水準が高い会社は、原則どおり貸倒実績率で計算することになります。

どちらを使うかは選べる

条文上、法定繰入率は「……とすることができる」という書き方になっています。原則の貸倒実績率と法定繰入率のいずれかを選べるということです。実務では両方を計算し、繰入限度額が大きくなるほうを採用します。

損金にするための手続:損金経理と別表への記載

計算ができても、手続を踏まなければ損金にはなりません。要件は2つあります。

1. 損金経理をしていること

法人税法第52条第1項・第2項は、いずれも「損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額」について損金算入を認める書き方をしています。決算で費用として処理していることが前提であり、申告書上だけで引当金を計上することはできません。

2. 確定申告書に明細を記載していること

同条第3項は、第1項および第2項の規定は「確定申告書にこれらの規定に規定する貸倒引当金勘定に繰り入れた金額の損金算入に関する明細の記載がある場合に限り、適用する」としています。実務上は別表十一がこれに当たります。

ただし同条第4項では、記載がない確定申告書の提出があった場合でも、その記載がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、税務署長は第1項および第2項の規定を適用することができるとされています。救済の余地はありますが、当然に認められるものではありません。

翌期は全額を戻す(洗替)

法人税法第52条第10項は、損金の額に算入された貸倒引当金勘定の金額は、その事業年度の翌事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入すると定めています。

つまり税務上の貸倒引当金は洗替方式です。前期に繰り入れた金額は翌期に全額を戻し入れ、あらためて当期末の債権残高に基づいて繰り入れ直します。差額だけを積み増す差額補充法で会計処理している場合は、申告調整で辻褄を合わせる必要があります。

この仕組みから分かるとおり、貸倒引当金は税額を減らすものではなく、繰り延べるものです。毎期同じ規模で債権が残っていれば、繰入と戻入がおおむね相殺され、初年度に生じた効果がそのまま維持される形になります。債権が急に増えた期には効果が出ますが、減った期には逆に所得が増えます。

会計上の貸倒引当金との違い

会計上は、債権の回収可能性を見積もって引当金を計上します。税務上の繰入限度額と一致するとは限りません。

  • 会計上の計上額が税務上の繰入限度額を超える場合……超える部分は損金にならず、加算調整します。
  • そもそも適用対象外の法人の場合……会計上計上しても全額が損金になりません。
  • 会計上の計上額が繰入限度額より少ない場合……損金になるのは実際に損金経理した金額までです。限度額まで自動的に損金になるわけではありません。

3つ目は見落としやすい点です。限度額はあくまで上限であり、決算で計上した金額を超えて損金にすることはできません。繰入限度額の計算は、決算を締める前に行っておく必要があります。

実務での進め方

  1. 自社が適用対象法人かを確認する(資本金1億円以下か、大法人の完全支配下でないか)
  2. 期末の債権を洗い出し、個別評価に該当するものを抜き出す(施行令96条1項の事実に当たるか)
  3. 残りを一括評価金銭債権として集計する(敷金・保証金・前渡金、完全支配関係がある法人への債権は除く)
  4. 貸倒実績率と法定繰入率の両方で繰入限度額を計算し、有利なほうを採る(法定繰入率なら実質的に債権とみられない金額を控除)
  5. 決算で損金経理する(申告調整だけでは不可)
  6. 別表十一に明細を記載して申告する
  7. 翌期首に全額を戻し入れる

まとめ

  • 貸倒引当金の繰入額を損金にできる法人は、資本金1億円以下の普通法人、公益法人等・協同組合等、人格のない社団等、銀行・保険会社等などに限定されています(法人税法第52条第1項)。資本金5億円以上の法人の100パーセント子会社は対象外です。
  • 個別評価は施行令第96条第1項の事実ごとに、一括評価は債権残高に率を掛けて計算します。敷金・保証金・前渡金は一括評価の対象に含まれません。
  • 一括評価の率は、原則が過去3年の貸倒実績率、中小法人等の特例が法定繰入率(卸売・小売10/製造8/金融・保険3/割賦販売小売等7/その他6、いずれも1,000分の1単位)です。
  • 損金算入には損金経理と、確定申告書への明細の記載(別表十一)が必要で、繰り入れた金額は翌事業年度に益金算入されます(同条第10項)。

貸倒引当金は、まず「自社が使えるのか」、次に「どこまでを債権に含めるのか」で結論が大きく変わります。とくに敷金・保証金や、グループ会社への売掛金の扱いは、毎期そのまま引き継がれていることが多い部分です。決算前に一度、債権の内訳から見直しておくことをおすすめします。判定や計算でご不明な点があれば、残高の内訳とあわせてご相談ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、2026年7月時点の税制・法令に基づいて作成しています。税制は改正される場合があり、また個別の取り扱いは状況により異なります。実際の判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
税理士 奥山博史

奥山 博史(おくやま ひろし)/税理士
東京税理士会 豊島支部・税理士登録番号 第66047号
昭和32年生まれ。東洋大学経済学部卒業。平成元年に奥山税務会計事務所(東京都豊島区南池袋)を開業。会社設立・法人/個人の税務顧問・相続まで、池袋を拠点に幅広く手がける。

この記事は 税理士 奥山博史(東京税理士会 豊島支部・登録番号 第66047号) が監修しています。


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