奥山税務会計事務所(東京都豊島区南池袋/池袋駅徒歩8分)
完成工事高は、建設業の決算書で「売上高」にあたる科目です。ただ、実務で迷うのは言葉の意味よりも、「この工事の売上は、今期と来期のどちらに入れるのか」というタイミングのほうではないでしょうか。
結論からお伝えすると、法人税では、請負による収益は原則として目的物を引き渡した日の事業年度に計上します。入金した日や請求書を出した日ではありません。そして「引き渡した日」をいつと見るかは、会社が合理的な基準を決めて、毎期続けて使うことが求められています。
この記事では、完成工事高の意味と売上高との違い、計上するタイミングの決め方、期をまたぐ工事で起きやすいずれ、経営事項審査との関係を、国の告示と条文・通達にもとづいて整理します。
1. 完成工事高とは:建設業の財務諸表で「売上高」にあたる科目
建設業の許可を受けた会社は、建設業法で定められた様式の財務諸表を作ります。その損益計算書では、売上高を「完成工事高」と「兼業事業売上高」に分けて書きます。勘定科目の中身は国の告示(勘定科目の分類)で定められており、完成工事高は次のように説明されています。
工事進行基準により収益に計上する場合における期中出来高相当額及び工事完成基準により収益に計上する場合における最終総請負高(請負高の全部又は一部が確定しないものについては、見積計上による請負高。)又は会社が顧客との契約の義務の履行の状況に応じて当該契約から生ずる収益を認識する場合における工事契約に係る収益。ただし、税抜方式を採用する場合は取引に係る消費税額及び地方消費税額を除く。
出典:昭和57年建設省告示第1660号(勘定科目の分類)。建設業情報管理センター掲載版
読みほどくと、完成工事高に入る金額は次の3つのどれかです。
| 収益の計上のしかた | 完成工事高に入る金額 |
|---|---|
| 工事完成基準 | 最終総請負高(請負高が確定していない部分は、見積りで計上した請負高) |
| 工事進行基準 | 期中の出来高に相当する額 |
| 契約の義務の履行の状況に応じて収益を認識する場合 | 工事契約に係る収益 |
名前に「完成」と付いていますが、工事の進み具合に応じて収益を計上している工事では、完成前でもその期の出来高にあたる金額が完成工事高になります。
2. 完成工事高と売上高の違い
2.1 売上高のうち、建設工事の分が完成工事高
完成工事高は、売上高の言い換えではありません。売上高のうち、建設工事の請負から生じた部分を指します。告示は、もう一方の兼業事業売上高を「建設業以外の事業(兼業事業)を併せて営む場合における当該事業の売上高」と説明しています。
| 区分 | 一般的な損益計算書 | 建設業法の様式による損益計算書 |
|---|---|---|
| 売上高 | 売上高 | 完成工事高 + 兼業事業売上高 |
| 売上原価 | 売上原価 | 完成工事原価 + 兼業事業売上原価 |
| 売上総利益 | 売上総利益 | 完成工事総利益 + 兼業事業総利益 |
建設工事だけを行っている会社では、売上高と完成工事高は同じ金額になります。建設工事のほかに別の事業の売上がある会社では、その分を兼業事業売上高に分けます。建設業法でいう「建設工事」は、同法の別表第一に掲げられた工事です(建設業法第2条第1項)。ある取引が建設工事の請負にあたるかどうかは契約の中身で決まるため、迷うものは個別に確認が必要です。
2.2 共同企業体(JV)の工事と消費税
告示は、共同企業体で施工した工事について、共同企業体全体の完成工事高に出資の割合を乗じた額、または分担した工事額を計上するとしています。請負金額の全体を自社の完成工事高に入れるのではありません。
消費税については、税抜方式を採用している場合、完成工事高には消費税額と地方消費税額を含めません(告示のただし書き)。
2.3 一緒に出てくる建設業の科目
| 建設業の科目 | 告示での説明 | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| 完成工事未収入金 | 完成工事高に計上した工事に係る請負代金の未収額 | 完成工事未収入金と売掛金の違い |
| 未成工事受入金 | 請負代金の受入高のうち完成工事高に計上していないもの | 未成工事受入金と前受金の違い |
| 未成工事支出金 | 完成工事原価に計上していない工事費など | 未成工事支出金とは? |
どの科目も「完成工事高(または完成工事原価)に計上したかどうか」で線が引かれています。つまり、完成工事高をいつ計上するかが決まらないと、ほかの科目の金額も決まりません。
3. いつ計上するか:法人税の原則は「引き渡した日」
法人税法は、資産の販売や役務の提供による収益を、目的物の引渡しの日、または役務の提供の日の属する事業年度の益金に算入すると定めています(法人税法第22条の2第1項)。
請負については、国税庁の通達がさらに具体的に、原則として引渡し等の日の属する事業年度の益金に算入するとしています(法人税基本通達2-1-21の7)。同じ通達はただし書きで、請負が「履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの」に当たり、履行の進み具合に応じて算定した額を益金に算入しているときは、それも認めるとしています。
お金が入った日でも、請求書を出した日でもなく、引き渡した日が基準です。着工時や中間で受け取った代金は、引渡しまでは未成工事受入金として負債に置いておきます。
4. 引渡しの日の決め方:4つの例から合理的な日を選び、続けて使う
では、建設工事の「引渡しの日」はいつでしょうか。通達は、次のように定めています。
その建設工事等の引渡しの日がいつであるかについては、例えば作業を結了した日、相手方の受入場所へ搬入した日、相手方が検収を完了した日、相手方において使用収益ができることとなった日等当該建設工事等の種類及び性質、契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日によるものとする。
| 通達に挙げられている日 | どういう日か |
|---|---|
| 作業を結了した日 | 工事の作業が終わった日 |
| 相手方の受入場所へ搬入した日 | 発注者の受入場所に運び入れた日 |
| 相手方が検収を完了した日 | 発注者の検査が終わった日 |
| 相手方において使用収益ができることとなった日 | 発注者が使い始められる状態になった日 |
押さえておきたい点は2つです。
- どれか1つに決まっているわけではない。工事の種類や性質、契約の内容に応じて、引渡しの日として合理的と認められる日を選びます。
- 選んだ日を続けて使う。通達は「法人が継続してその収益計上を行うこととしている日」としています。年度ごとに基準を変えるものではありません。
4.1 一部が完成して引き渡した場合(部分完成)
工事の全部が完成していなくても、次のような事実がある場合は、引き渡した量や完成した部分ごとに収益を計上します(法人税基本通達2-1-1の4)。
- 一つの契約で同種の建設工事等を多量に請け負い、引渡量に従って工事代金を収入する特約または慣習がある場合
- 1個の建設工事等でも、一部が完成し、その部分を引き渡した都度その割合に応じて工事代金を収入する特約または慣習がある場合
この扱いは、長期大規模工事として工事進行基準が適用される場合などを除きます。
5. 長期大規模工事は工事進行基準が強制される
引渡しの日を待たずに、工事の進み具合に応じて各期に収益と費用を計上しなければならない工事があります。法人税法の「長期大規模工事」です(法人税法第63条第1項、同法施行令第129条)。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 工事の期間 | 着手の日から、契約で定められた目的物の引渡しの期日までが1年以上 |
| 請負の対価 | 10億円以上 |
| 支払の条件 | 請負の対価の2分の1以上が、引渡しの期日から1年を経過する日後に支払われることが定められていないこと |
長期大規模工事に当たらない工事でも、着手した事業年度中に引渡しが行われないものは、確定した決算で工事進行基準の方法により経理したときは、その経理した収益と費用の額が益金・損金になります(法人税法第63条第2項)。
会計の側では、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)が、履行義務が一定の期間にわたり充足されるものか、一時点で充足されるものかで収益を計上する時期を分けています。工事進行基準・工事完成基準という呼び方との関係は、工事進行基準は廃止された?収益認識基準への移行で変わる会計処理で詳しく解説しています。
6. 期をまたぐ工事で起きやすい「期ズレ」
完成工事高の計上で気をつけたいのは、決算日の前後に引渡しがある工事です。引渡しの日ではなく、入金した日や請求書を出した日で売上を立てていると、計上する事業年度がずれることがあります。
たとえば3月決算の会社で、次の工事があったとします(引渡しの日は、会社が継続して使っている基準で判定した日とします)。
| 工事 | 引渡しの日 | 請求・入金 | 完成工事高に計上する期 |
|---|---|---|---|
| A工事 | 3月25日 | 4月に請求、5月に入金 | 当期(入金が翌期でも、引渡しが当期) |
| B工事 | 4月10日 | 3月に中間金を受領 | 翌期(3月に受け取った中間金は未成工事受入金) |
A工事を入金した5月の売上にしてしまうと、当期の売上が漏れます。完成工事高を計上した期には、その工事にかかった原価も未成工事支出金から完成工事原価へ振り替えます。売上と原価の期がそろっているかも、あわせて確認するところです。
売上や経費の年度のずれが税務調査でどのように見られるかは、税務調査で指摘されることは?一番多いのは「期ズレ」と経費の混入で解説しています。完成工事原価の内訳は、完成工事原価報告書の書き方をご覧ください。
7. 経営事項審査では完成工事高が評価される
公共性のある施設や工作物に関する建設工事で政令で定めるものを、発注者から直接請け負おうとする建設業者は、経営事項審査を受けなければなりません(建設業法第27条の23)。国土交通省の資料では、この審査の項目の一つが「X1 完成工事高(許可業種別)」で、総合評定値を計算するときのウェイトは0.25とされています。
出典:国土交通省「現行の企業評価制度の概要」。審査の基準は改正されることがあるため、申請の際は最新の内容をご確認ください。
また、許可を受けた建設業者は、毎事業年度が終わってから4か月以内に、財務諸表などの書類を国土交通大臣または都道府県知事に提出します(建設業法第11条第2項)。
つまり、決算書の完成工事高は、税金の計算だけでなく、許可行政庁に提出する書類や経営事項審査でも使われる数字です。税理士として関わるのは、その元になる決算書の数字を正しく作るところです。
- 建設工事の売上と、それ以外の事業の売上を、取引ごとに分けて記帳しておく
- 引渡しの日の基準を社内で決め、毎期同じ基準で計上する
- 共同企業体の工事は、出資の割合を乗じた額または分担した工事額で計上する
経営事項審査や許可の申請手続きそのものは、行政書士などの専門家にご相談ください。
8. よくある質問
8.1 請求書を出した日に完成工事高を計上してもよいですか?
法人税の原則は、引渡し等の日の属する事業年度です(法人税基本通達2-1-21の7)。請求書の日付と引渡しの日が同じ事業年度の中にあれば年度のずれは起きませんが、決算日をまたぐときは、引渡しの日で判定する必要があります。
8.2 引渡しの日の基準を、工事によって変えてもよいですか?
通達は、建設工事等の種類・性質、契約の内容等に応じて合理的と認められる日のうち、法人が継続して収益計上を行うこととしている日によるとしています(同2-1-21の8)。自社の工事の種類ごとにどの日を使うかを決め、続けて使うことが前提です。具体的な決め方は、契約書の定めも踏まえて税理士にご相談ください。
8.3 工事代金が確定していない工事は、どう計上しますか?
告示は、工事完成基準で計上する場合の完成工事高について、「請負高の全部又は一部が確定しないものについては、見積計上による請負高」としています。
9. まとめ
- 完成工事高は、建設業法の様式による損益計算書で売上高のうち建設工事の分を表す科目です。建設業以外の事業の売上は兼業事業売上高に分けます(昭和57年建設省告示第1660号)。
- 法人税では、請負による収益は原則として引渡し等の日の属する事業年度に計上します(法人税法第22条の2第1項、法人税基本通達2-1-21の7)。
- 建設工事の引渡しの日は、作業を結了した日・搬入した日・検収を完了した日・使用収益ができることとなった日などのうち、合理的と認められる日を継続して使います(同2-1-21の8)。
- 着手から引渡しの期日まで1年以上・請負の対価10億円以上などの長期大規模工事は、工事進行基準で計上します(法人税法第63条、同法施行令第129条)。
- 決算書の完成工事高は、許可行政庁に提出する書類や経営事項審査でも使われます。入金日や請求日で売上を立てていないか、決算日前後の工事を確認することが大切です。
「この工事は今期の売上か、来期の売上か」で迷うときは、契約書と引渡しの記録をもとに判断します。決算の前に、期をまたぐ工事を一覧にしておくと確認がしやすくなります。
- 未成工事受入金と前受金の違いとは?建設業経理の勘定科目を仕訳例つきで徹底解説
- 完成工事未収入金と売掛金の違い|建設業特有の勘定科目を条文から整理する
- 工事未払金・買掛金・未払金の違いとは?建設業の勘定科目を仕訳例でわかりやすく解説
この記事の根拠(一次資料)
- 昭和57年建設省告示第1660号(勘定科目の分類)建設業情報管理センター掲載版
- 法人税法 第22条の2(収益の額)・第63条(工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例)
- 法人税法施行令 第129条(工事の請負)
- 国税庁 法人税基本通達2-1-21の7(請負に係る収益の帰属の時期)・2-1-21の8(建設工事等の引渡しの日の判定)
- 国税庁 法人税基本通達2-1-1の4(部分完成の事実がある場合の収益の計上の単位)
- 建設業法 第2条(定義)・第11条(変更等の届出)・第27条の23(経営事項審査)
- 国土交通省「現行の企業評価制度の概要」
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、2026年10月時点の税制・法令・会計基準に基づいて作成しています。税制は改正される場合があり、また個別の取り扱いは状況により異なります。実際の判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。
この記事は 税理士 奥山博史(東京税理士会 豊島支部・登録番号 第66047号) が監修しています。


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